カテゴリー: 力学

  • 「京大らしい騒動」の先に見えるもの

    「京大らしい騒動」の先に見えるもの

    おはこんばんにちは。力学観測研究所のRYOです。

    今回の京都大学総長選考のニュース、

    「いかにも京大らしい」ですね~

    引用元:京都大学「異例の総長選考」が波紋、教職員投票で「3位」が新総長に…教員ら反発「なぜ説明がない」

    ニュース要約っぽいもの

    ・京都大学の次期総長選考で、教職員による意向調査で3位だった立川康人氏が総長に選出された。
    ・教員や学生らは、選考過程の透明性や説明不足を問題視し、抗議集会を開催した。
    ・「意向調査」と最終決定との関係や、大学ガバナンスのあり方が議論となっている。

    教職員の意向調査と異なる結果になり、それに対して教員や学生が抗議集会を開く。

    大学の自治や自由の学風を重んじてきた京都大学だからこそ、このような光景になるのでしょう。

    もちろん、教員側には様々な立場や思惑があると思います。(大人の事情。。)

    制度そのものへの問題提起なのか、選考結果への異議なのか、それとも別の考えがあるのか。

    外から見える情報だけで断定することはできません。

    一方で、私が少し応援したくなるのは学生です。

    もし学生の中に、

    「なぜこのような判断になったのだろう。」

    「制度として本当にこれで良いのだろうか。」

    そんな純粋な疑問を持っている人がいるなら、その姿勢はとても大切だと思います。

    社会に出ると、

    「決まったことだから。」

    「そういうものだから。」

    という言葉だけで済まされる場面が少なくありません。

    しかし、本当に成長する人は、その一歩手前で立ち止まり、

    「なぜ?」

    と問いを立てます。

    この問いに必ず一つの正解があるとは限りません。

    だからこそ、自分なりに考え、制度を調べ、人と議論すること自体に価値があります。

    このニュースで一番興味を持ったのは総長が誰になったかではありません。(総長って、○走○みたいな響き)

    その出来事をきっかけに、

    「なぜそうなったのか。」

    自発的に考え始めた学生がいるかもしれない、ということです。

    大学は知識を学ぶ場所ですが、それだけではありません。

    組織の仕組み、人間関係、意思決定、利害関係。

    そうした「社会の力学」を観察できる場所でもあります。

    もし今回の出来事が、誰か一人でも社会の仕組みを考えるきっかけになったのなら、それは大学という場にとって決して無駄な出来事ではないのかもしれません。

    ※3名とも私は存じ上げない人物ですよ!

  • ベインキャピタルはなぜ「一番おいしいところ」で去れたのか~キオクシアの株価心電図の真相~

    ベインキャピタルはなぜ「一番おいしいところ」で去れたのか~キオクシアの株価心電図の真相~

    〜キオクシアではなく、「出口戦略」に注目してみる〜

    おはこんばんにちは。

    力学観測研究所のRYOです。

    引用元:Bain Capital exits Kioxia after chip deal yields big returns

    ニュース要約

    ベインキャピタルが、保有していたキオクシア株をすべて売却したことが明らかになった。
    2018年に東芝メモリ(現キオクシア)へ投資して以来、AIブームによる株価上昇を経て、投資案件としては歴史的な成功例の一つになったと報じられている。

    今回注目したいのは、キオクシアそのものではなく、「ベインキャピタルの出口戦略(つまり、逃げ切りの巧さ)」です。

    皆さんは「キオクシア」という会社をご存じでしょうか。

    一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。

    しかし、日本経済新聞を読まれる方や、パソコン・半導体に興味がある方なら、一度は名前を見たことがあると思います。
    私のメインパソコンのDドライブにもキオクシア製のSSDを追加しています。

    キオクシアは、東芝メモリを前身とするNANDフラッシュメモリメーカーです。

    SSDやスマートフォンなど、私たちの身近な製品にも使われている記憶媒体を製造しています。

    約1年半前に東京証券取引所へ上場し、その後、生成AIブームという強力な追い風を受けました。

    AIが普及すればするほど、大量のデータを保存・読み出しする高速な記憶媒体が必要になります。

    その期待から、キオクシアは市場の主役の一社となりました。

    売買代金は膨らみ、市場全体がお祭りのような熱気に包まれます。

    「AI関連だから、まだまだ上がる。」

    そんな期待が株価を押し上げていきました。祭りだわっしょい!

    ところが、どんな相場にも終わりはあります。

    そこで私が注目したのが、キオクシアの大株主だったベインキャピタルです。

    ベインキャピタルは2018年、東芝メモリ買収を主導した投資ファンドです。

    そして市場が最も盛り上がっていた局面で保有株を段階的売却し、最終的にはすべて手放しました。

    もちろん、その後に起こる特許訴訟や株価急落まで正確に予測していたとは思いません。

    しかし結果だけを見ると、

    「一番おいしいところで利益を確定した」

    ように見えます。

    ですが、私は少し違う見方をしています。

    多くの個人投資家は、

    「もっと上がるかもしれない。」

    「最高値で売りたい。」

    と考えます。※皆そうだよね!ワシもやで!

    一方、投資ファンドの仕事は少し違います。

    彼らの目的は、

    株価の最高値を当てることではありません。

    市場が十分に盛り上がり、

    大量の株式を無理なく市場へ受け渡せるタイミングを見極めることです。

    つまり、

    株価ではなく、市場全体の熱量を見ている。

    そんな印象を私は受けました。

    ニュースでは、

    「キオクシア急落」

    「AI関連株が失速」

    といった見出しが並びます。

    もちろん、それも事実です。

    しかし、少し視点を変えると、

    巨大な投資ファンドは、どのように利益を確定し、市場から退出していくのか。

    そんな別の物語も見えてきます。

    今回のニュースを見て、

    半導体メーカーとしてのキオクシア以上に、

    ベインキャピタルという投資ファンドの「引き際」に興味を持ちました。

    ニュースは企業を主役(主語)にします。

    しかし、少し視点を変えるだけで、主役はまったく違って見えてきます。

    今回の主役は、キオクシアではなく、

    「出口戦略を設計したベインキャピタル」

    だったのかもしれません。

    といっても結果論ですが、投資のプロってひと味違う。。

  • 二度も敗訴した宇和島市は、本当に間違っていたのか?

    二度も敗訴した宇和島市は、本当に間違っていたのか?

    おはこんばんにちは。

    力学観測研究所のRYOです。

    今回は、愛媛県宇和島市で起きた退職金を巡る裁判について考えてみたいと思います。

    引用元退職金「全額不支給」納得できず提訴した懲戒免職の市職員、「半額不支給」にされ再度提訴…市を相手取った訴訟の判決は?

    ニュース要約っぽいもの
    宇和島市は元職員の退職金を巡り、一度目は全額不支給、二度目は半額不支給と判断しました。しかし裁判所はいずれも認めず、「確定判決の拘束力に反する」として再処分を取り消しました。行政と司法の線引きが改めて問われた事例です。

    ニュースだけを見ると、

    「市が二度も裁判で負けた。」

    「行政の判断は違法だった。」

    そういう印象を受ける方も多いでしょう。

    もちろん、司法判断は尊重されるべきです。

    今回も裁判所は、市が行った再処分について「確定判決の拘束力に反する」と判断しました。

    しかし私は、このニュースを少し違う角度から見ました。


    誰のお金なのか

    今回の退職金は約1,640万円。

    もちろん、市役所職員個人のお金ではありません。

    市民が納めた税金です。

    もし市が何もせず満額支給していたら、

    「18万円を私的に流用した人へ満額退職金を支給した。」

    という批判が出た可能性もあります。

    行政には、市民への説明責任があります。

    だから私は、

    「本当に満額支給で良いのか。」

    これを司法へ改めて問いかけたようにも見えました。


    市は何を守ろうとしたのか

    一般的には、

    「面子で再処分した。」

    そんな見方もあるでしょう。

    実際のところ、市の真意は分かりません。

    しかし別の見方もできます。

    全額不支給は認められなかった。

    では半額ならどうか。

    市民の財産を預かる立場として、

    どこまで許されるのか。

    その線引きを司法へ委ねた。

    そう考えることもできます。


    三権分立は動いている

    このニュースで一番興味を持ったのはここです。

    行政が判断する。

    当事者が争う。

    司法が線を引く。

    そして行政は、その判断に従う。

    これは自治体レベルでも三権分立が機能している例と言えるのではないでしょうか。

    市は二度敗訴しました。

    しかし、

    「行政が勝ったか負けたか」

    だけが重要なのではありません。

    行政が市民を代表して判断し、

    司法がその適法性を審査し、

    最終的なルールを決める。

    私は、この流れそのものに価値があると感じました。


    力学を観測すると

    ニュースでは、

    「市が二度も負けた。」

    という結果が大きく報じられます。

    しかし、私はその奥にある

    行政

    司法

    市民感情

    税金

    説明責任

    これらが互いに引っ張り合う力学が気になりました。

    誰か一人が悪い。

    誰か一人が正しい。

    そんな単純な構図ではありません。

    だからこそ、このニュースは「力学観測研究所」の最初の時事ネタとして、とても象徴的な題材だと思いました。

    ニュースは結果だけを見ると白黒に見えます。

    しかし、一歩引いて観測すると、そこには様々な立場が引っ張り合う”力学”が見えてきます。

    これからも、そんな視点でニュースを観測していきたいと思います。

  • 日本はEVの「超先進国」なのだ!(その4)

    日本はEVの「超先進国」なのだ!(その4)

    日本が「EV一辺倒」にならなかったのは、遅れていたからではない

    おはこんばんにちは。力学観測研究所のRYOです。

    前回は、

    EV化とは、単にエンジンをモーターへ載せ替える話ではない。

    市場/物流/企業戦略/雇用/消費

    そしてお金の流れ。

    そのすべてを組み替える、

    巨大な産業構造の変化である。

    という話をしました。

    今回は、もう少し私たちの生活に近いところから考えてみます。

    なぜ日本は、

    欧州や中国のように、

    「これからは、とにかくBEVだ!」

    という方向へ一気に進まなかったのでしょうか。

    日本のメーカーが出遅れたから?経営者の判断が遅かったから?日本人が新しいものを嫌うから?

    もちろん、そういう面がまったくないとは言いません。

    でも私はそれだけでは説明できないと思っています。

    日本には、

    日本なりの地理/都市構造/住宅事情/電力事情/産業構造

    そして、すでに大量に普及していたハイブリッド車があります。

    今回は、

    日本がEV一辺倒にならなかった力学

    を観測してみます。


    まず、日本政府は「EV化」を拒否していません

    ここは最初に確認しておきたいところ。

    日本政府は、

    EVの普及そのものに反対しているわけではありません。

    乗用車については、

    2035年までに新車販売を✨電動車100%✨にする目標を掲げています。

    ただし、

    ここでいう「電動車」には、

    BEV/PHEV/FCV/HEV

    https://www.meti.go.jp/press/2024/12/20241227006/20241227006-6.pdf

    が含まれています。↑参照元

    つまり日本の方針は、

    「2035年にガソリンだけで走る新車をなくしていく」

    であって、

    「2035年にすべての新車をBEVにする」

    ではありません。ここを混同すると、

    日本の政策がとても消極的に見えます。

    しかし実際には、日本は電動化を否定しているのではなく、

    電動化の方法を一つに限定していない。

    ということで、ここに日本の考え方がよく表れていると思います。


    日本には、すでにハイブリッドという答えがあった

    日本でBEVの販売比率が低い理由を考えるとき、

    無視できない存在があります。

    そう、ハイブリッド車です。

    ハイブリッド車は、エンジンを搭載しています。

    そのため、BEVの統計では通常は純粋なEVとして数えられません。

    しかし実際には、モーター/インバーター/回生ブレーキ/駆動用バッテリー/電力制御

    そうした電動技術を大量に使っています。

    日本の国内新車市場では、HEVの比率が長期的に上昇し、BEVやPHEVよりもはるかに大きな市場を形成してきました。経済産業省の資料でも、2023年度の国内新車販売においてHEVが電動車の中心であったことが示されています。

    つまり日本人は、

    電動車を拒否したのではありません。

    むしろ充電器を探さなくてもいい。

    長距離でも困りにくいし燃費も良いし従来のガソリンスタンドも使える。

    そんな、今までの生活を大きく変えなくても使える電動車を選んだのです。

    これは保守的ではなくかなり合理的だったと思います。


    BEVは「クルマだけ買えば終わり」ではない

    ガソリン車やハイブリッド車ならクルマを買ったあと、

    近所のガソリンスタンドへ行けば使えます。

    しかしBEVは、

    クルマだけでは完成しません。

    充電設備が必要。自宅で充電するのか?勤務先で充電するのか?買い物中に充電するのか?高速道路で急速充電するのか?

    つまりBEVは車両と充電環境をセットで買う乗り物です。

    一戸建てで、

    敷地内に駐車場があり自宅へ充電器を設置できる人ならBEVとの相性はかなり良いでしょう。

    夜に帰宅してケーブルをつなぐ。朝には充電されている。ガソリンスタンドへ行く必要もない。

    これは便利!

    でも……

    集合住宅ではどうでしょう。

    立体駐車場/機械式駐車場/月極駐車場/賃貸住宅/管理組合/電気工事/費用負担

    誰が充電器を設置し誰が電気代を管理し故障時に誰が対応するのか。

    一戸建てなら個人の判断で済むことが集合住宅では、

    合意形成の問題になります。

    BEV普及の難しさは、バッテリー性能だけではありません。

    コンセントまでの人間関係的なもの。これが意外と大きい。

    政府は2030年までに公共用充電設備を30万口まで拡大する目標を掲げており、IEAも日本が2024年末時点から大幅な増設を目指していると整理しています。

    裏を返せば、

    今後それだけ増設しなければ、

    BEVをガソリン車並みに便利には使えないということでもあります。


    東京と地方では、同じ日本でも条件が違いすぎる

    日本の交通政策を難しくしている理由の一つは、

    都市部と地方で、生活の形がまったく違う

    ことです。

    東京や大阪の中心部では、

    鉄道🚃/地下鉄🚆/バス🚌徒歩🚶/自転車🚲

    さまざまな移動手段があります。クルマを持たなくても生活できる人も多い。

    むしろ、駐車場代渋滞維持費。それらを考えると、

    クルマを持たない方が合理的な場合すらあります。カーシェアも便利だしね!

    一方で地方では、

    通勤買い物通院子どもの送り迎え高齢者の移動

    そのすべてにクルマが必要な地域があります。

    国土交通省の交通調査でも、地方都市圏では三大都市圏より自動車への依存が強い傾向が確認されています。

    つまり地方でクルマは、趣味やぜいたく品ではありません。

    生活インフラ。です。

    こういう地域で、航続距離/冬季性能/充電場所/停電時の対応/車両価格

    そうした不安を無視して、

    今日からBEVに乗り換えてください。

    とは言えません。

    東京の感覚だけで全国の自動車政策を決めると、

    地方の人から見れば、

    「鉄道がある人たちが、クルマが必要な人たちへ説教している」

    ように見えてしまいます。これはよろしくない。


    日本の軽自動車文化も無視できない

    日本には、軽自動車という独特の市場があります。

    小さい/比較的安い/狭い道でも使いやすいし税負担も抑えられている。

    地方では一人一台に近い形で使われている家庭もあります。

    国土交通省の統計では、日本全国で軽四輪車が3,200万台を超える規模で保有されています。

    この市場をBEV化する場合、

    大きな問題があります。

    それは、価格です。

    高級車なら、100万円分のバッテリー価格が乗っても車両全体の価格に吸収しやすい。

    しかし、

    安さそのものが価値である軽自動車では、バッテリー代の影響が非常に大きくなります。

    300万円の高級車が350万円になるのと、150万円の軽自動車が200万円になるのとでは、同じ50万円でも意味が違います。

    地方で日常の足として使われるクルマほど、価格上昇の影響が重い。

    だから日本では、

    小さなエンジン/ハイブリッド/小容量バッテリー/短距離向け軽EV

    そうした複数の答えを用意する必要があります。

    全部を同じBEVへそろえる必要はないと思います。


    電気で走れば、すべてゼロエミッションなのか?

    EVは、

    走行中に排気ガスを出しません。都市部の大気環境を考えればこれは非常に大きな利点です。

    しかし、

    クルマが使う電気は、どこかで作られています。

    日本の電源構成は再生可能エネルギーや原子力だけではありません。

    2022年度には、LNGが33.8%、石炭が30.8%、石油などが8.2%を占め、火力発電への依存が大きい構造でした。

    最新のエネルギー基本計画でも、日本の電源構成の約7割を火力が占める現状を踏まえ、脱炭素電源への置き換えが必要だとされています。

    つまり、

    EVは走行中にCO₂を出さなくても発電方法まで含めれば環境負荷が完全にゼロになるわけではありません。

    もちろん、だからEVは無意味だ!という話ではありません。

    エンジン車も、

    原油の採掘/輸送/精製/給油

    その過程でエネルギーを使います。

    重要なのはマフラーから出る排気ガスだけでなく、エネルギーの入口から出口まで見ることです。

    発電が脱炭素化されればEVの環境性能はさらに良くなります。

    逆に、発電の多くを化石燃料に頼ったままクルマだけを急いでEVへ変えても効果は限定的になります。

    クルマの電動化/再生可能エネルギー/原子力/送電網/蓄電池

    これらは別々の政策ではありません。全部つながっています。


    EVが増えれば、電気は夜に勝手に余るのか?

    よく、

    夜間電力で充電すればいい。

    と言われます。基本的な考え方としては理解できます。

    多くのクルマが止まっている夜間に充電できれば、

    利用者にとって便利です。ただし、何百万台ものBEVが、

    帰宅後の同じ時間帯に一斉に充電を始めたらどうなるでしょう。

    地域によっては、配電設備/変圧器/マンションの受電容量/ピーク電力。

    これらへの対応が必要になります。

    逆に充電時間を賢くずらす、電力が余る時間帯に充電する、太陽光発電が多い昼間に勤務先で充電する、BEVのバッテリーから家庭や電力網へ電気を戻す。

    そうした制御ができればEVは電力網の負担ではなく、

    巨大な分散型蓄電池になる可能性もあります。

    つまり、EV普及に必要なのは、クルマの生産台数だけではありません。

    充電器の数/電力料金/発電構成/送配電網/充電制御。

    すべてを同時に設計する必要があります。クルマ会社だけでは解決できない話です。


    日本メーカーは本当に何もしてこなかったのか?

    日本メーカーは、BEVへの対応が遅れた。

    これは一面では事実でしょう。特に世界のBEV市場では、

    中国メーカーやテスラが大きな存在感を持ち、日本メーカーが出遅れたように見える局面があります。

    IEAは、日本の電気自動車販売比率が2024年時点で小さく、政策継続を前提とした2030年予測でも他の主要市場より低い水準にあると見込んでいます。

    ここは、素直に認めた方がいいと思います。

    ただし日本メーカーが、電動化を何もしてこなかったわけではありません。

    ハイブリッドモーターインバーター回生ブレーキパワー半導体電池制御燃料電池。

    これらの技術は、長年積み重ねてきました。

    問題は、その技術をBEV市場の成長へ十分つなげられたかです。

    つまり、技術がなかったのではなく、市場の読み方、投資のタイミング、商品構成、ソフトウェア、電池調達

    そうした戦略面で課題があった。

    「日本は何もしてこなかった」と断じるのも「ハイブリッドがあるからBEVは不要」と開き直るのも、どちらも違うと思います。


    世界も、少しずつ「EV一辺倒」から変化している

    興味深いことに世界の政策も、

    BEV一本へ一直線という状態から少し変化し始めています。

    資源エネルギー庁も2026年の解説で、電動化の方向自体は続く一方、各国でEV一辺倒ではなく、HEVやPHEVを含む複数の選択肢を持つ方向へ政策や市場が動き始めていると整理しています。

    これは日本が最初からすべて正しかった。という話ではありません。

    日本メーカーがBEVへの投資を遅らせてよかった。という話でもありません。

    ただ、世界の条件は一つではなかった。ということです。

    国土が広い国/寒冷地が多い国/集合住宅が多い国/電力が安い国/再生可能エネルギーが豊富な国/石炭火力が多い国/鉄道が発達した国/クルマが生活必需品の国

    条件が違えば最適解も違います。


    マルチパスウェイは、逃げなのか?

    日本メーカーや日本政府はよく、マルチパスウェイという言葉を使います。

    BEV/HEV/PHEV/FCV/合成燃料/バイオ燃料

    複数の技術を併存させる考え方です。この言葉を聞くと、

    BEVへ踏み切れない日本の言い訳では?

    疑いがあります。

    選択肢を残すと言いながら単に決断を先送りしているだけなら、それは戦略ではありません。

    しかし一方で、

    地域も用途も電源構成も所得も住宅事情も違うのにすべてを一つの動力へそろえる方が不自然です。

    都市の小型車ならBEV・長距離移動ならPHEV・価格を重視するならHEV・決まった拠点を走る配送車ならBEV・大型商用車なら水素や脱炭素燃料も検討する

    そして大都市の大量輸送は鉄道。

    そうやって役割を分けた方が現実的ではないでしょうか?

    問題は選択肢を増やすことではありません。

    どの用途にどの技術を使うのか。

    いつまでに何を実用化するのか。その優先順位が曖昧なことです。

    マルチパスウェイが戦略になるかただの先送りになるか、違いはそこにあります。


    EVは万能ではない。でも、必要である

    私は、BEVは不要だとは思いません。

    むしろ、自宅で充電できるし

    日々の走行距離が決まっている/都市部で使う/短距離配送に使う/太陽光発電と組み合わせる

    こうした条件では非常に合理的な乗り物です。

    走行中に排気ガスを出さない/静か/低速からトルクが出る/回生ブレーキを使える/自宅で充電できる/オイル交換も不要。

    BEVならではの利点は確かにあります。

    しかし、長距離を頻繁に走る/充電設備を設置できない/寒冷地で使う/購入価格を最優先する/災害や停電への備えを重視する

    そういう人にまで、同じ答えを押し付ける必要は無いです。

    適材適所。結局はそこへ戻ってきます。


    日本が目指すべきは「BEV比率世界一」ではない

    私は、

    日本が目指すべき目標は、BEV販売比率で世界一になることではないと思っています。

    目的は交通から出るCO₂を減らすこと/都市の大気をきれいにすること/エネルギー輸入を減らすこと/人々の移動を便利にすること/物流を止めないこと/自動車産業の雇用と技術を次の時代へつなぐことです。

    BEV比率は、その進捗を見る指標の一つにすぎません。

    鉄道を増やしてクルマで移動する距離そのものを減らす/ハイブリッドによって燃料消費を減らす/小型車へ乗り換える/物流を鉄道や船へ移す/再生可能エネルギーを増やす/発電を脱炭素化する/BEVを適した場所へ普及させる/全部を組み合わせた結果として/CO₂が減る。

    それが本来の目的でしょう。手段の普及率を目的にしたら、本末転倒です。


    今回の力学観測

    日本がEV一辺倒にならなかったのは、単純に遅れていたからではありません。

    すでにハイブリッドが普及していた。大都市では鉄道が大量の移動を担っていた。地方ではクルマが生活必需品だった。

    集合住宅では充電設備の設置が難しかった。軽自動車という低価格市場が大きかった。電源構成には火力発電が多く残っていた。

    そして、

    自動車産業が巨大すぎた。

    そうした力学が重なった結果です。もちろんそれを理由に、BEVへの対応の遅れをすべて正当化することはできません。

    しかし、EV販売比率という数字だけを見て、

    日本は遅れている/経営者が無能だった/世界から取り残された

    と結論づけるのは少し雑です。

    日本はBEVへ進む必要があります。

    同時にHEVも/PHEVも/鉄道も電力の脱炭素化も必要です。

    私は、「何を何台売ったか」より、「社会全体で何を減らせたか」を見るべきだ。と思っています。


    シリーズを振り返って

    第1回では、

    「EVって、クルマだけですか?」

    と問い掛けました。

    第2回では、

    「EV普及率の分母は何なのか?」

    を考えました。

    第3回では、

    EV化によって

    市場/物流/雇用/企業戦略/お金の流れ。

    そのすべてが組み替わることを見てきました。

    そして今回は日本がなぜBEV一辺倒にならなかったのか?

    その背景を考えました。このシリーズで私が言いたかったことは、一つです。

    EVという一つの数字だけで、国の交通と環境を評価してはいけない。

    日本の都市は、

    すでに電気で動く鉄道を大量に使っています。

    日本の自動車市場は、ハイブリッドという形で電動化を進めてきました。そこへ今後、

    BEV/PHEV/FCV/再生可能エネルギー/蓄電池/新しい交通サービス

    それらをどう組み合わせるのか?

    勝負はこれからです。


    ※この記事は、私独自の視点による考察です。
    異論・反論は絶賛募集中です!

    ご自身のブログなどでご意見をまとめていただき、その記事へのリンクをコメント欄に貼り付けてください。


    今回参考にした主な資料

    • 経済産業省「自動車・蓄電池産業」
    • 経済産業省「参考資料(自動車)」
    • 資源エネルギー庁「エネルギー基本計画」
    • 資源エネルギー庁「エネルギー白書2024」
    • 国土交通省「数字でみる自動車2025」
    • IEA「Global EV Outlook 2025」
    • 資源エネルギー庁「世界で見直しがはじまった自動車産業政策」
  • 日本はEVの「超先進国」なのだ!(その3)

    日本はEVの「超先進国」なのだ!(その3)

    おはこんばんにちは。力学観測研究所のRYOです。

    前回は、

    「EV普及率という数字は、何を分母にしているのか?」

    という話をしました。

    クルマだけを数えるのか。

    それとも、

    鉄道を含めた人間の移動全体を見るのか。

    分母を変えれば、同じ日本でもまったく違う景色が見えてきます。

    今回は、さらに別の角度からEVを見てみます。

    それは、

    経済

    です。

    EVの話になると、

    環境に良い排気ガスを出さない充電時間が長い航続距離が短い

    そんな性能や環境負荷の議論が中心になります。

    もちろん、それも大切です。

    でも……

    EV化とは、単にエンジンをモーターへ交換する話ではありません。

    市場/株価/物流/企業戦略/雇用/消費

    そして、

    お金の流れ。

    これらすべてを組み替える、

    巨大な産業構造の変化なのです。

    今日は、その力学を観測してみます。


    日本の自動車産業は、ちょっと大きすぎる

    まず、日本における自動車産業の大きさを確認します。

    経済産業省の資料によると、日本の自動車関連産業は、

    • 出荷額:約72兆円
    • 雇用:約559万人
    • 設備投資:約1.6兆円
    • 研究開発費:約4.3兆円

    という規模です。

    自動車は日本の主要商品別輸出額の約21%を占め、製造業の出荷額、設備投資、研究開発費でも極めて大きな存在です。

    ……。

    559万人。

    自動車メーカーの社員だけではありません。

    部品メーカー/素材メーカー/金型/工作機械/半導体/販売店/整備工場/ガソリンスタンド/運送会社/保険会社/広告/中古車市場

    ありとあらゆる産業が、自動車を中心につながっています。

    自動車工業会も、自動車関連産業の就業人口を約558万人と推計しています。

    つまり、

    日本にとってEV化とは、

    約559万人が関係する巨大産業の内部構造を、走りながら組み替える作業

    なのです。これは、

    「来年から全部EVにしましょう!」

    で済む話ではありません。


    エンジンが消えると、仕事も消える?

    内燃機関のクルマには、

    エンジン/吸排気系/燃料噴射装置/トランスミッション/マフラー/エンジンオイル/点火プラグ

    さまざまな部品が必要です(何万点あんねん!レベル)。

    一方、BEVは基本的に、

    バッテリー/モーター/インバーター/パワー半導体/制御ソフト

    といった別の部品構成になります。

    もちろん、EVになってもタイヤやサスペンション、ブレーキ、車体、内装などは必要です。

    しかし、

    これまでエンジン車のために作られていた部品の一部は、確実に需要が減ります。

    同時に、

    モーター/蓄電池/電池材料/パワー半導体/ソフトウェア/充電設備/電力制御

    こちら側には新しい需要が生まれます。

    経済産業省も、今後の自動車産業では、従来のパワートレイン部品からモーター、パワー半導体、制御、モビリティサービスなどへ付加価値が移動すると整理しています。

    つまりEV化とは、

    仕事が全部なくなる話ではありません。

    正確には、

    仕事の場所が移動する。

    という話です。

    ただし……工場も技術者も設備も、

    今日から急に移動できるわけではありません。

    ここが難しい。


    市場は「正しい技術」ではなく、「売れる商品」を選ぶ

    EVの議論では、

    「EVの方が技術的に優れている」

    「いや、ハイブリッドの方が現実的だ」

    という論争になりがちです。

    でも市場は、

    技術的に正しい商品を自動的に選んでくれる場所ではありません。

    価格/補助金/充電環境/電気料金/ガソリン価格/住宅事情/中古車価格/ブランド/納期

    そして、

    消費者が抱く不安。

    これらが全部混ざって、販売台数が決まります。

    2023年の日本では、EV販売が約5.6万台、PHEVが約4.3万台だったのに対し、HEVは約203万台でした。

    日本の消費者は「電動化」を拒否しているのではありません。

    むしろ、

    ハイブリッドという形で、すでに大量に電動車を選んでいます。

    ここを無視して、

    日本人はEVを買わない。
    だから遅れている。

    と結論づけるのは少し雑です。

    日本市場では、

    充電を意識せず使える電動車が、消費者の需要に合った。

    まず、そう考えるべきでしょう。


    補助金は、価格を下げるだけではない

    EV購入補助金を見ると、

    「高いEVを安く買える制度」

    と考えがちです。

    もちろん、それも間違いではありません。

    しかし、補助金にはもう一つの役割があります。

    それは、

    政府がお金の流れを変えること。

    です。

    政府がEVに補助金を出す。

    すると消費者がEVを選びやすくなる。

    販売台数が増える→メーカーは生産設備へ投資する→電池メーカーの受注が増える→充電設備が増える→電力会社や商業施設も、新たな設備投資を行う。

    一台の購入補助金がその一台だけで終わるわけではありません。

    政府は2035年までに新車販売を電動車100%とする方針を掲げていますが、日本の「電動車」にはEVだけでなく、PHEV、HEV、FCVも含まれています。

    つまり日本政府も、

    いきなり全部をBEVへ一本化するのではなく、複数の技術へ資金を流す戦略

    を取っています。

    これは優柔不断なのでしょうか。

    私はむしろ、

    559万人が関係する産業を壊さずに移行するための、

    現実的なトランジション戦略

    だと思います。


    株価は「現在」よりも「未来の期待」で動く

    企業の株価は、

    今何台売ったかだけで決まりません。

    これから、

    どれだけ成長するのか/どれだけ利益を出せるのか/競争に勝てるのか。

    その期待によって大きく動きます。

    EV市場が急成長すると見られれば、

    電池メーカー/半導体メーカー/モーター関連企業/充電設備企業/ソフトウェア企業

    そうした企業へ資金が集まりやすくなります。

    反対に、エンジン車への依存度が高いと見られた企業は、

    実際の利益が出ていても、

    「将来は大丈夫なのか?」

    という疑いを持たれます。

    ここが株式市場の面白く、そして少し怖いところです。

    株価は、工場の現在地ではなく、投資家が想像する未来へ先に走っていく。

    しかし……

    未来予測は外れます。

    EVが予想より売れない。補助金が縮小される。電池価格が下がらない。充電設備が増えない。原材料価格が上がる。

    その瞬間、

    今度は期待が逆回転します。

    だから、

    株価の上昇=その技術が社会的に正しい

    とは限りません。

    株価は、

    あくまでその時点の期待と資金の流れを映した数字です。


    EVの主役は、実は自動車メーカーだけではない※ここ重要

    EVになると、自動車メーカーの競争相手も変わります。

    これまでは、

    エンジン/トランスミッション/車体設計/生産技術/販売網

    こうした総合力が強さの中心でした。

    しかしEVでは、

    蓄電池/パワー半導体/ソフトウェア/データ/通信/電力制御

    これらの比重が高まります。

    経済産業省は、2030年までに国内の蓄電池製造能力を大きく増やし、電池と重要鉱物の供給網を強化する方針を進めています。

    その背景には、日本も電池セルや関連部材、鉱物資源の一部を特定国に依存しているという問題があります。

    つまり、

    自動車メーカーが良いクルマを作るだけでは足りません。

    リチウム/ニッケル/コバルト/黒鉛/電池セル/半導体/船舶/港湾/電力

    すべてがつながっています。

    EVはクルマですが、

    経済の構造として見ると、

    巨大な動く電子機器であり、巨大な蓄電池であり、資源の塊

    でもあります。


    物流までEVにすれば、すべて解決?

    乗用車のEV化と、

    トラックのEV化は同じではありません。

    トラックは、

    長い距離を走ります。

    重い荷物を積みます。

    稼働時間そのものが売上になります。

    充電時間が長ければ、その時間は荷物を運べません。

    さらに大きなバッテリーを積めば、

    その分だけ車両重量が増え、

    積める荷物が減る可能性もあります。

    日本の国内貨物輸送では、トラックが大きな割合を担っています。国土交通省の資料でも、トンキロベースで自動車が国内貨物輸送の過半を占める構造が示されています。

    しかも物流業界では、ドライバー不足と労働時間規制による輸送能力不足が課題になっています。

    国土交通省は最新の再検証で、2030年度に平均約7%、最大約25%の輸送力不足が生じる可能性を示しています。

    ここで、

    環境のためにトラックを全部EVへ!

    とだけ言って、

    輸送能力/積載量/充電時間/車両価格/運転手の収入/荷主が支払う運賃

    これらを無視したらどうなるでしょう。

    運送会社が苦しくなる→運賃が上がる→商品価格が上がる→配送頻度が下がる。

    そして最後に負担するのは→消費者です。

    環境政策と物流政策は、別々に考えてはいけません。


    消費者は「環境性能」だけでクルマを買わない

    消費者がクルマを選ぶ理由は、

    一つではありません。

    価格/燃費/デザイン/サイズ/使い勝手/故障への不安/下取り価格/充電場所/家族構成/趣味/運転の楽しさ。

    人によって全部違います。

    環境に良いからといって、

    300万円のクルマを買う人に、

    500万円のクルマを買えとは言えません。

    補助金で価格差を埋めることはできます。

    しかしそのお金は、

    空から降ってくるわけではありません。

    税金です。

    つまり、

    EVを買わない人も含めて負担します。

    だから補助金には、

    環境改善によって社会全体が得る利益

    と、

    一部の購入者へ渡る利益

    の釣り合いが必要です。

    補助金を否定するつもりはありません。

    ただ、

    補助金がなければ売れない商品を、

    本当に市場が選んだ商品と呼べるのか。

    この問いは残ります。


    EV化で「お金」はどこへ移動するのか?

    ガソリン車を使えば、

    ガソリンスタンドへお金が流れます。

    石油元売り/輸送会社/整備工場/オイルメーカー/部品メーカー

    そこから雇用と税収が生まれます。

    EVを使えば、

    電力会社/充電サービス会社/電池メーカー/半導体メーカー/ソフトウェア企業/設備工事会社

    こちらへお金が移ります。

    つまり、

    EV化とは単に、

    ガソリン代が電気代へ変わる話ではありません。

    産業間で、お金の川の流れが変わる。

    という話です。

    そして、お金の流れが変われば、

    企業の利益も雇用も税収も地域経済も変わります。

    ガソリンスタンドが減る地域。電池工場ができる地域。充電拠点になる商業施設。電力需要が増える時間帯。

    すべてに勝つ人と負ける人が生まれます。


    経済の力学は、善悪では割り切れない

    EVは善。✨

    エンジン車は悪。😈

    そんな単純な話なら楽です。

    でも現実には、

    EV化によって新しい産業と雇用が生まれる一方、

    従来の部品産業や整備業には大きな変化が起こります。

    消費者は燃料費を抑えられるかもしれません。

    一方で、車両価格や充電設備への負担が増えることもあります。

    電池産業へ投資すれば、新しい市場を獲得できるかもしれません。

    一方で、海外の鉱物や電池供給網への依存が増える可能性もあります。

    だから必要なのは、

    EVを増やすこと自体を目的にしないこと。

    ではないでしょうか。

    目的は、

    CO₂を減らすこと。

    都市の空気をきれいにすること/移動を便利にすること/産業と雇用を維持すること/物流を止めないこと/消費者の負担を抑えること。

    EVは、そのための有力な手段です。※SDGs(Sustainable Development Goals)ぽいね!

    でも、

    手段を目的にした瞬間、経済のどこかに無理が出る。

    私はそう思っています。


    今回の力学観測

    日本が一気にBEVへ一本化できないのは、

    技術が遅れているからだけではありません。

    日本の自動車産業が、

    大きすぎる。

    深くつながりすぎている。

    そして、

    雇用/輸出/物流/消費/地域経済

    そこに流れるお金が大きすぎる。

    だからこそ、

    日本はハイブリッド/PHEV/BEV/燃料電池/鉄道

    さまざまな手段を同時に残しながら、少しずつ構造を変えようとしています。

    これは遅さなのか。

    それとも、

    巨大な産業を壊さずに動かす慎重さなのか。

    少なくとも私は、

    EV販売比率という一つの数字だけでは判断できない。

    と思っています。


    次回予告

    次回は、

    「日本がEV一辺倒にならなかった理由」

    について、

    日本の地理/住宅事情/都市構造/電力事情。

    そして、ハイブリッドという選択。

    もう少し生活に近いところから考えてみたいと思います。

    次回へ続く)

    ※この記事は、私独自の視点による考察です。
    異論・反論は絶賛募集中です!

    ご自身のブログなどでご意見をまとめていただき、その記事へのリンクをコメント欄に貼り付けてください。


    今回参考にした主な資料

    • 経済産業省「自動車分野におけるトランジション・ファイナンス技術ロードマップ」
    • 日本自動車工業会「日本の自動車工業2024」
    • 経済産業省「自動車をとりまく国内外の情勢と自動車政策の方向性」
    • 国土交通省「2030年度に想定される輸送力不足への対応方針」
    • 資源エネルギー庁「クリーンエネルギー自動車の購入補助制度」
  • 日本はEVの「超先進国」なのだ!(その2)

    日本はEVの「超先進国」なのだ!(その2)

    世界のEV普及率ランキングのカラクリ

    おはこんばんにちは。力学観測研究所のRYOです。

    前回は、

    「EVって、クルマだけですか?」

    という話をしました。

    今回は、その続きをお話しします。


    ニュースではよく、

    日本はEV後進国

    EV普及率は世界最低レベル

    そんな見出しを見かけます。

    でも私は、この表現を見るたびに思うことがあります。

    「その数字、何を数えていますか?」

    今日は、この一点だけを掘り下げてみます。


    EV普及率とは何なのか?

    まず、多くのニュースで使われる

    EV普及率

    という言葉。

    実は、ほとんどの場合、

    新車販売台数に占めるEV(BEV)の割合

    を意味しています。

    例えば、

    100台車が売れて、

    20台がEVなら

    EV普及率20%

    という計算です。

    ここまでは何も間違っていません。


    でも、何か変だと思わない?

    例えば日本には、

    年間何十億人という人が利用する

    新幹線 JR 私鉄 地下鉄

    があります。

    これらはほぼ電気で走っています。

    ところが、

    EV普及率ランキングには、

    これらは一切入りません。


    つまり、

    毎日延べ何百万人もの人が

    電気で移動していても

    統計上は

    ゼロ

    なのです。


    日本人は本当に内燃機関ばかりで移動しているのか?

    例えば東京。

    東京駅へ向かう人の多くは、

    新幹線 JR 私鉄 地下鉄

    などを利用します。

    これらは、

    電気モーターで走っています。

    つまり、

    実際の移動エネルギーは、

    かなり以前から電化されています。

    にもかかわらず、

    EV普及率ランキングでは

    まるで存在しません。


    分母が違えば、結論も変わる

    ここが今日一番言いたいところです。

    日本でよく報道されるランキングは、

    分母が

    新しく売れたクルマ

    です。

    一方、

    我々が見たいのは、

    分母を

    人が移動した距離

    にした統計です。

    あるいは

    旅客輸送量(人キロ)

    でもいいでしょう。

    この分母で比較したら、

    日本の電動化をめぐる景色がかなり変わる


    例えるなら…

    少し極端な例ですが、

    A国

    • 全員がEVに乗る
    • 鉄道はほとんど無い

    B国

    • 車はハイブリッド中心
    • しかし都市交通はほぼ全部電車

    この2か国を、

    「EV普及率」

    だけで比較すると、

    A国が圧勝になります。

    しかし、

    CO₂排出量や実際の電動化率まで同じ差があるとは限りません。

    つまり、

    ランキングそのものより、

    何を分母にしているか

    の方が重要なのです。


    数字は嘘をつかない。

    でも、

    数字は、

    見せ方次第で

    全く違う印象になります。

    私は

    「EV普及率ランキングは間違っている」

    と言いたいのではありません。

    “クルマだけ”を見たランキングとしては正しい。

    ただ、

    それを

    国全体の電動化ランキング

    のように受け取ると、

    話がおかしくなります。


    次回予告

    では、

    日本はなぜ

    ここまで鉄道が発達し、

    ハイブリッドを選び、

    欧州とは違う道を歩んできたのでしょうか。

    次回は、

    「日本がEV一辺倒にならなかった理由」

    について、

    地理、都市構造、エネルギー事情まで含めて考えてみたいと思います。

    (次回へ続く)

    ※私オリジナルの考え方です。
    異論・反論は絶賛募集中です!
    ご自身のブログ記事に記入の上リンクを
    コメント欄に貼り付けてください。

  • なぜ神社で手を合わせるのか?

    なぜ神社で手を合わせるのか?

    おはこんばんにちは。力学観測研究所のRYOです。

    皆さんは旅行先で⛩️神社⛩️を見かけると、立ち寄ることはありますか?

    私は結構あります。

    でも、不思議なことにお願いする内容は、昔からほとんど変わりません。

    「どうか、このまま無事に家へ帰るまで見守ってください。」

    こればかりです。

    お金持ちになりたいとか、出世したいとか、そういうお願いはほとんどしたことがありません。※でも常に邪念と煩悩はある!

    最近、神社について少し考えることがありました。

    神社へ入ると、

    「空気が違う。」

    「厳かな感じがする。」

    そう感じる人は多いと思います。

    もちろん、木々に囲まれた静かな環境や、街の喧騒から少し離れた立地も影響しているのでしょう。

    でも、それだけでは説明できない何かがあるように思います。

    私は、その空気を作っているのは、

    その神社を何百年も守り続けてきた人々の営み

    なのではないかと思っています。

    誰かが掃除をし、

    誰かが祭りを続け、

    誰かが手を合わせ、

    誰かが大切な人を想い、

    誰かが感謝し、

    誰かが悲しみを祀ってきた。

    その積み重ねが、その場所の空気を作っている。

    そんな気がします。

    だから私は、神社へ一礼することは、

    神様だけに頭を下げているわけではないと思っています。

    この土地を守ってきた人々。

    この神社を受け継いできた人々。

    何かを祀ろうとした人々。

    その「祈る心」に対しても、一礼しているのではないでしょうか。

    面白いのは、自分の地元の神社だけは少し感覚が違うことです。

    子どもの頃、私は神社の境内で友達と遊び回っていました。

    今思えば結構やんちゃでした。

    それでも不思議と、

    「神様に怒られる。」

    という感覚はありませんでした。

    むしろ、

    「地元の神様が、これくらいで本気で怒るわけがない。」

    そんな、子どもながらの安心感がありました。

    もちろん、神社を壊したり汚したりするのは論外。

    でも、境内で遊び、笑い、祭りを楽しむ。

    そんな子どもたちも含めて、地域の神社は何百年も見守ってきたのでしょう。

    一方、旅行先では少し違います。

    そこは自分のホームではありません。

    その土地には、その土地の歴史があり、

    その土地の人々が守ってきた神社があります。

    だから私は、

    「ちょっと通りますよ。」

    「無事に帰れるまで見守ってください。」

    そんな気持ちで手を合わせています。

    力学観測的に考えると、

    神社とは「神様の場所」であると同時に、

    人間が何かを大切にしてきた記憶が積み重なる場所

    なのかもしれません。

    だから神社へ入ると自然と静かになり、

    一礼したくなる。

    それは神様への敬意だけではなく、

    その場所に何百年も積み重ねられてきた人々の営みや祈り、

    そして、それを今日まで守り続けてきた人々への敬意でもある。

    私はそんなふうに考えています。

    もしそうだとすれば、

    神社の厳かな空気というのは、

    神様が作っているだけではなく、

    人間が何世代にもわたって作り続けてきた空気

    なのかもしれません。

  • 日本はEVの「超先進国」なのだ!(その1)

    日本はEVの「超先進国」なのだ!(その1)

    おはこんばんにちは。力学観測研究所のRYOです。

    最近、ニュースなどでこんな言葉を見かけませんか?

    ……。

    うん。

    でも、

    今日は、その理由を書いてみたいと思います。

    現在、日本ではEV(電気自動車)を購入すると、国の補助制度を利用できます。

    例えば300万円前後のEVなら、

    「思っていたよりずっと安く買える。」

    そんなケースも珍しくありません。

    東京都がここまで積極的なのは、単なる景気対策ではありません。

    都市部の大気環境改善や脱炭素政策の一環として、

    「EVを普及させたい。」

    という明確な意思表示でもあります。 

    私は、この政策自体は十分理解できます。

    都市部で使う乗り物としては、とても合理的です。

    ここからが今日の本題です。

    皆さんは、

    EVとは何だと思いますか?

    Electric Vehicle。

    直訳すると、

    「電気で動く乗り物」

    以上!

    ……

    では、

    東京や大阪で、

    毎日何百万人もの人が利用している乗り物は何でしょう?

    JR 私鉄 地下鉄 新幹線

    そう、ほとんどが、

    電気モーターで走っているぞ!

    ここで私は、ある違和感を覚えます。

    ニュースでは

    「日本はEV後進国」

    と言う。

    でも、

    東京駅や大阪駅では、

    毎朝何百万人もの人が、

    電気で動く乗り物に乗って移動しています。

    これって、

    どう考えればいいのだろうか?

    「EV後進国」という言葉の落とし穴

    もちろん、

    ここで私は

    「日本は世界一だ!」

    と言いたいわけではありません。

    車だけを見れば、

    欧州や中国に比べてBEV(バッテリーEV)の普及が遅れていることは事実です。(普及とは?。。)

    そこは否定しません。

    しかし、

    私がずっと引っ掛かっているのは、

    「何を比較しているのか。」

    という点です。

    世間で言われる「EV普及率」は、

    基本的には乗用車市場を比較した数字です。

    でも、

    人間の移動は、

    本当に自動車だけなのか?

    私は、

    ここにこのテーマの面白さがあると思っています。

    「車」ではなく、

    「モビリティ(人を運ぶ乗り物全体)」

    という視点で見ると、

    日本はまったく違う景色に見えてきます。

    次回へ続く)

    ※私オリジナルの考え方です。
    異論・反論は絶賛募集中です!
    ご自身のブログ記事に記入の上リンクを
    コメント欄に貼り付けてください。

    ■今回引用した資料

    • 東京都「令和8年度 EV・PHEV補助上限額引き上げ」  
    • 経済産業省「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」